地盤改良工事とは?工法・費用・業者選びまでわかりやすく解説

地盤改良工事は建築物の基盤、基礎を支える地盤を強化し、安全性と耐久性を高めるための重要な工程です。今回は、主に建物の設計会社、建築会社、工務店、家を建てようとしている一般の方向けに、概要や工法、流れなど、地盤改良工事のあらゆる側面を九州を中心に地盤改良を行うタムラクレーンが詳しく解説します。

地盤改良工事とは?

地盤改良工事は、建物が沈んだり傾いたりするリスクを防ぐために地盤を強くする工事です。地盤改良の基本的な目的や必要性、そしてその種類について詳しく解説します。

地盤改良の目的と必要性

建物を安全に長く使用するためには、しっかりとした地盤が不可欠です。軟弱な地盤にそのまま建物を建てると、地盤沈下や傾きなどの問題が発生しやすくなります。これを防ぐために行うのが地盤改良工事です。

たとえば、元々地盤が軟弱な地域や、人工的に住宅地として整備されたばかりのエリアや、埋立地などでは、地盤が緩いケースが少なくありません。こうした場所では、地盤調査の結果に応じて、適切な改良工事が必要になります。

地盤改良の種類

地盤改良には、大きく分けて以下の3種類があります。

  • 置換工法:軟弱な地盤を取り除いて、強い土や軽量な材料に置き換える方法。
  • 固結・混合処理工法:セメント系の材料を使って地盤を固める方法。
  • 杭補強工法:杭などを打ち込んで地盤を補強する方法。
  • 複合地盤補強工法:コストダウンと品質を追い求めた、地盤の強度と補強体の強度を混合した方法

それぞれの工法には適した地盤条件やコスト、工期などの特徴があります。次章からは、これらの工法についてより詳しく解説していきます。

いろいろな地盤改良工法

地盤改良工法には様々な種類があり、地盤の状態や建物の規模によって最適な方法が異なります。この章では、各工法の仕組みや特徴について具体的に見ていきましょう。

置換工法の種類と特徴

置換工法は、軟弱な土を掘削し、良質な土に入れ替えるシンプルな方法です。特に計画地表髙より2m以内の浅い軟弱地盤に適しており、費用も比較的安価ですが、置換材の品質管理と施工品質の管理を徹底する必要があります。軽量な材料に置き換える方法は品質管理が簡単になりますが、材料費など比較的コストが高くなります。

良質土置換工法

良質土置換工法は、地表から深さ1~2m程度の土を掘り起こして、良質土に置き換えし、地盤を強化する方法です。

水田跡地などの住宅用地では、表層だけが軟弱なことがよくあります。こうした場合に効果的で、しっかりとした材料管理、薄層転圧を実施する事で、建築可能な地盤を形成する事ができます。実施後の品質確認のための地盤調査により品質管理を行う必要もあり、使いどころは専門業者とよく協議する必要があります。注意点として、地盤保証が付かないケースが多いです。

軽量材置換工法

軽量材置換工法は、土砂などより比重の軽い材料へ置換する工法です。中空構造の強化プラスチック体の構造物などへ土砂を置き換えする工法です。品質管理は容易になりますが、コスト面が大きく増えるため、事前の見積と予算確保が必要です。

固結・混合処理工法の種類と特徴

この工法では、地盤にセメント系固化材やセメントミルクを混合・注入して地盤を強化します。施工範囲が広く、応用性が高いのが特徴です。

表層改良(浅層混合処理工法)

設計地盤面から2mまでの深度に対して有効で、掘削した土砂と、固化材を混合攪拌し、それを何層にも分けて埋戻し、転圧を行い地盤を強化する工法です。地下水が多く出る場合は施工が困難な場合があります。

柱状改良(深層混合処理工法)

設計深度まで掘削したスクリューの先端からセメントミルクを注入し、軟弱な地層と攪拌混合する事で、地中にコンクリートの杭を形成する方法です。土の質によって固化しにくいなどの問題もあり、事前の配合試験は必須です。

杭補強工法の種類と特徴

杭補強工法では、さまざまな材料を使用した杭を使って建物の荷重を深い支持層に伝えます。コストが比較的高くなりますが、高い耐久性と確実な支持力が得られるのがメリットです。

鋼管杭工法

先端部分に羽根材を加工した鋼材で作られた鋼管製の杭です。特に地盤が深くまで軟弱な場合に有効で、専用重機を使った打設が必要になります。場合によっては、擁壁の崩壊対策として安息角内への鋼管杭施工などとしての用途も存在します。
近年の鋼材の高騰の影響を受け、材料コストとしては高額になりがちです。

木杭工法

古くから土木の施工で使用されてきた杭です。過去は松材を使用した松杭が有名でしたが、現在は材料供給の事情により、杉材が多く使用されています。松杭同様、杉材も水中では腐食しないという特徴を活かしており、地下水が豊富な平野部の軟弱地盤地帯でよく使用されています。しかし、実際に有効な施工は約10m程度までと言われており、深度が深い場合にはあまり推奨できないのが正直なところです。

複合地盤補強工法の種類と特徴

複合地盤強工法では、高騰する地盤補強費用をコストダウンし、補強体としてもメリットを追求した、比較的新しい次世代の補強工法となっています。様々な工法が開発され、年々その実績は積み重なり、信用できる工法へと発展しています。

砕石杭工法(HySPEED工法)

軟弱地盤を取りだし、そこへ基準値を合格した砕石を投入し、特殊な機材で地中で砕石を転圧しながら杭体を構築する工法。
地震災害や水害に耐性があり、材料も砕石と、コストバランスと性能に優れた工法です。

砕石土のう工法(DBOX工法)

特殊土のうを地盤面に埋設する工法。土のう内は砕石で充填され、荷重や振動を砕石で分散するという工法。万能というわけではないが、幅広い摘要範囲と比較的安いコストでの施工が可能という特徴をもつ。

地盤改良工事の費用相場

地盤改良工事にかかる費用は、工法や地盤の状態、建物の規模などによって大きく異なります。各工法ごとの費用目安や、費用に影響を与える要素について詳しく解説します。地盤改良工事の費用は、主に以下のような工法ごとに異なります。

工法費用目安(1坪あたり)特徴
良質土置換工法約2.5〜5万円浅い軟弱地盤に有効。比較的安価。
浅層混合処理工法約5.0~10万円浅い軟弱地盤に有効。
深層混合処理工法約10万円〜精密な施工が可能。液状化対策に有効。
鋼管杭工法約12〜35万円高い耐久性。
砕石杭(HySPEED工法)約2.5万~5万円砕石による高い効果
砕石土のう(DBOX工法)約5.0万~10万

上記費用はあくまで目安で、下記のような項目で費用が大きく異なります。

  • 地盤の軟弱度:深くまで柔らかいほど、強力な工法が必要になります。
  • 建物の重さや大きさ:大型住宅や3階建てなどは、より高い支持力が求められます。
  • 施工面積:当然ながら、改良する面積が広ければ費用も増加します。

たとえば、敷地面積が狭くても、地盤が非常に悪い地域では薬液注入などのコストが高い工法が必要になる場合があります。

地盤改良工事の工期

工事期間は、建築スケジュール全体に影響を与えるため、事前に目安を知っておくことが重要です。

工法工期目安
表層置換工法約1〜3日
浅層混合処理工法約3〜6日
深層混合処理工法約4〜7日
鋼管杭工法約3〜5日
砕石杭(HySPEED工法)約1~2日
砕石土のう(DBOX工法)約3~7日

上記のように、施工内容が複雑になるほど工期も長くなる傾向があります。工期を左右するのは、以下のような要因です。

  • 天候:雨天や強風は作業に支障をきたすため、予定が遅れることがあります。
  • 重機の搬入可否:狭い土地や道路事情によって、重機が入れない場合は工期が延びることも。
  • 事前調査の正確さ:調査結果が不十分だと、途中で工法の見直しが必要になり、結果的に期間が延びるリスクがあります。

適切なスケジュールを組むためにも、事前の地盤調査と計画がカギになります。

地盤改良工事の流れ

地盤改良工事は、いくつかのステップを経て丁寧に進められます。スムーズな施工を実現するためには、各段階の役割や目的を理解することが大切です。この章では、地盤調査から施工後の確認までの流れをご紹介します。

まずは地盤調査をする

地盤改良の第一歩は、地盤調査です。これは建物を建てる土地の強度や構造を把握するために行います。主な調査方法には、スウェーデン式サウンディング試験やボーリング調査などがあります。

たとえば、スウェーデン式サウンディング試験は住宅用地で広く使われ、比較的低コスト(数万円程度)で実施可能です。調査の結果により、地盤の状態が「良好」「やや軟弱」「非常に軟弱」などと評価され、それによって工法の選定が決まります。

工法の選定

調査結果を基に、最適な工法を選定します。施工業者と建築士が協力して、地盤の状態、建物の規模、コストのバランスを考慮したプランを立てます。たとえば、浅い軟弱層があるだけなら複合地盤補強工法、深くまで軟弱層が続くなら深層混合処理工法や鋼管杭工法が候補になります。この選定が適切でないと、施工後の沈下やクレームの原因になりかねません。

施工

選定した工法に従って施工が行われます。施工期間中は、重機による掘削・混合・杭打ちなどの作業が実施されます。施工現場では、安全対策や近隣への配慮も欠かせません。

施工後の確認

施工が完了したら、強度の確認や沈下のリスクがないかの検証を行います。これは地盤改良が適切に行われたことを証明するためにも重要です。以上に示した主な施工工法であれば、地盤保証会社による長期間にわたる不同沈下保証を受けられるケースもあります。この確認が済んで初めて、次の工程である基礎工事へと移ることができます。

優良な地盤改良工事会社の選び方

地盤改良工事は専門性が高く、信頼できる業者選びが住宅の品質を左右する重要なポイントです。この章では、業者選定の際に見るべきポイントや確認事項、問い合わせのコツについて詳しく解説します。

選定のポイント

優良な地盤改良業者を選ぶためには、以下のようなポイントに注目しましょう。

  • 地盤調査から工事まで一貫対応できるか
  • 複数の工法に対応しているか
  • 保証制度(地盤保証)を整備しているか

たとえば、「特定の工法しか提案しない業者」は、柔軟性に欠ける場合があります。複数工法を比較提案できる会社は、より信頼性が高いと言えるでしょう。

確認すべき事項

業者選定の際には、以下の点も事前に確認しておくと安心です。

  • 過去の施工実績と口コミ
  • 使用する材料の種類やメーカー
  • 施工管理体制やアフターフォロー

具体的には、「年間施工件数○○件」や「大手ハウスメーカーと提携実績あり」などの実績があると、安心感が増します。

問い合わせ・相談

最終的には、実際に問い合わせてみることが大切です。相談時の対応が丁寧かつ誠実かどうかは、業者選びの重要な判断材料になります。

質問例としては、

  • 「この地盤でどの工法が向いていますか?」
  • 「保証制度の内容について教えてください」

など、具体的な疑問をぶつけてみましょう。

地盤改良の必要性を理解し、適切な工法を選ぼう

地盤改良工事は、建築物の安全性と耐久性を保証するために不可欠な工事です。専門家として、最新の技術動向を把握し、適切な工法を選定することが重要です。コストと工期の適切な見積もりにより、建設プロジェクトの成功を支えることができます。

九州で地盤改良工事の業者をお探しなら、タムラクレーンにおまかせください。「なぜこの工法が最適なのか」「他の工法と比べてどのようなメリット・デメリットがあるのか」といった質問に対して、技術的な根拠を示しながらしっかりサポートいたします。まずはお気軽にご相談ください。